絵付けテクニック

上絵付け陶板画 アンティーク絵画を【精密模写】していく手順

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ポーセリンペインティング、磁器上絵付けにおいては、すでにある先生のお手本を元に真似て描く。ということを初歩の頃から積み重ねて絵付けというものを習得していく工芸です。ですので、水彩画やボタニカルアートといった真っ白なキャンバスにデッサンの線画ドローイングから始めて、色を付けて本物のように描いていく作業工程を経ての創作というのは、本当に素晴らしい神業だなと思うのです。

世に出ている素晴らしい絵画やイラストレーションなどをお手本に磁器に描くということも上絵付けではよくします。

真似て描くという「模写」ですが、なかなか忠実に描写するというのは、とても難しかったりします。

上記の写真は、私がA3サイズの陶板に描いたものです。今回は、アンティーク絵画を陶板に絵付け模写する手順をご紹介します。

基本の‟よく見て描く”

この絵、どこかでご覧になられたことあるという方もいらっしゃるかと思います。

Jan van Huysum(ヤン・ヴァン・ハイサム)(1682-1749)18世紀で最も尊敬されたオランダの静物画家さんの絵画を陶板に模写しました。

絵付けにおいて、描く対象をよく見て描く、お手本をよく見て描く、基本の“よく見て描く”の訓練のための徹底的な模写をやってみようの試み。

この時代のこういった植物画が大好きでこのハイサムやスパーンドンクやルデゥーテ然りで、描く対象を精細に忠実に再現され描かれている絵というのが憧れであり好きなんですよね。

陶板に描く

30cm×40cmの大きめの陶板に描いています。うちの窯に斜めにしてぎりぎり入るサイズで、いままでで一番大きなポーセリンキャンバスだと思います。
描いている間、筆を持つ手は画面に触れてはならないし、陶板は重くて支える左手は痺れてくるので手ごわかったです。

下準備

模写したい絵を見つけよう

模写したい絵画を本やネット上で見つけてください。ちなみにこの絵は“The Floral Art of Pierre-Joseph Redoute”というずいぶん前にどこかの美術館のミュージアムショップで買い求めたずいぶん前にどこかの美術館のミュージアムショップで買い求めたルデゥーテの本の中にある絵です。美しい花の絵画がたくさん載っています。買った時からいつか描いてみたーい!と思っておりました。

陶板を用意する

そして長方形の白磁を用意します。(→★★

今回、私が使った陶板は12インチ×16インチでA3サイズの約30㎝×40㎝ほどのものです。この大きさが入らない電気炉もあると思うので、手持ちの電気炉の内寸と照らし合わせて用意してください。

下絵を写す

  • 用意した陶板の大きさに合わせて、模写する絵を拡大カラーコピーする
  • トレーシングペーパーにシャープペンで下絵を写す
  • 下絵を写したトレーシングペーパーの下にカーボンを差し込み、スタイラスで下絵を陶板に写します。

メモ

私はブルーカーボンで写しましたが、筆で描いているうちに下絵が消えかかるので、赤色の非油性カーボンを使う方が、このような場合は良いと思います。

こういった絵は線画が細かく、トレーシングペーパー、それを陶板へと2段階の下絵を写すだけでも手が痛くなるほど時間がかかる作業ですが、下準備の段階なのでファイトです。

参考

1回目ですべては描き切れないので、背景の下絵は写さず、大まかな花の下絵のみ写す。

絵付けをはじめる

①右利きの方は左上から描き始めよう。数回の焼成が予想されるので、レッドを使う場合は、はじめからあまり濃くなりすぎないように描くことに注意する。

②左側からただただ見本の絵をよく見て、絵の具の色も近いものを使って2回目の絵付けが少しでも楽になるように描きすすめる。

③中央付近、ぽっかりスペースが残っているのは白い花の部分。白い花を描くときは、周りの色のついたところから攻めよう。

④下絵を写した部分は出来るだけ描いて1回目の焼成をする。800℃

⑤2回目の絵付け、花の部分を赤マスキング(水性マスキングリキッド)して背景を描く。1回目描いた花も2回目の絵付けをしておく。

⑥3回目以降の絵付け、暗い部分の多い絵なので、どんどん色味に深みと要所を細かく描き込んでいく。暗く色をつけるが、その暗さの中にも花があり葉があるので、見本に忠実に納得いくまで焼成を重ねて深みをつけていきます。

メモ

焼成回数は確か6回。焼成温度は2回目まで800℃。3回目以降は780℃。

額装しよう

陶板のいいところは、最後に金彩をしなくていいところ。そして陶板はぜひ額装しよう!

陶板は厚みが5㎜ほどあるので、ある程度深さに余裕のある額を選ぼう!

今回は、アンティーク調の少しいぶしの効いた額を設えてみました↑48cm×58cmほどの大きさ。

もどきですし、自己満足の自己流の絵付けですが、額に入れるとなんとなく絵画的に落ち着きます。

アンティーク絵画を精密模写していく手順のまとめ

今回のA3サイズの大きな陶板画には約3週間ほどかかりました。ほぼ毎日くらい少しずつ描きすすめて、時にはぶっ通しで。でも描いている間はずっと脳内楽しい~気分で、次の段階ではここをこうして…と描く段取りを考えながらワクワク寝食忘れて没頭しがちになります。

描きやすい左上から描き始め、下絵はブルーカーボンでとっていますが、使ったことある方は分かると思いますが、描いいるうちにどんどん見えなくなってきます。模写なので、できる限り見本の通り…と色合いなども考えながら絵の具をのせていきますが、描き慣れているバラなどはいつもの自分の筆筋で描くほうが楽なので、ついつい見本とかけ離れがちになってしまいましたが、結果オーライということで。

この記事は私の旧ブログ記事(→)を加筆修正しました。

【2015年6月制作作品】

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