ポーセリンペインターにとってのキャンバスである白磁。手軽に転写紙を貼ってオリジナルの食器を作って楽しめるポーセラーツをされている方々にとっても白磁はいつも探している対象ではないでしょうか。
ホビーの素材となるもの。一口に【白磁】と言ってもいろいろな種類があります。
目次
色で見分けやすい3種の白磁
① ポーセリン
- ごく一般的な白磁で青みグレーがかった色で重みがある
- 一般的なポーセリンより白さと光沢が際立つ精度の高い製品に、スーパーホワイトポーセリンやファインポーセリンなどもある
- 上絵付け焼成温度:800~820℃
② ボーンチャイナ
- 艶やかで温かみのある乳白色 薄く軽く強度もある
- 骨灰を使用することで強度と透光性に優れた高級磁器
- 上絵付け焼成温度:780~800℃
③ ニューボーン
- 温かみのある淡いベージュ色の磁器
- 還元焼成で最終焼成をした白磁と同じ素地に酸化焼成したもの
- 上絵付け焼成温度:800~820℃
私の手持ちのカップですが、絵付けに一番適していると感じるのは②のボーンチャイナです。柔らかめの釉薬に少なからず絵の具が沈むようで、焼成後の絵付け表面が艶やか滑らかきれいに焼けた感があります。
同じボーンチャイナの種類でもメーカーによっては違いも出るかもしれません。
ボーンチャイナとポーセリンを比べてみる
① 一般的なポーセリン代表・・・この3枚の中で最も重みと厚みを感じる白磁。色も見比べると最も青みグレー寄り。
② ノリタケのボーンチャイナ・・・美しい温かみのある象牙色
③ ニトリのボーンチャイナ・・・②と比べて若干厚みが薄く、きれいな乳白色
大きさはすべて直径26.5㎝ 重さ:①746g>②645g>③599g
一般のお店で売られている白磁を見かけることもあります。磁器という種類であれば焼成は可能です。(半磁器は重みがあり一層グレー色ですが焼成は可能)
ボーンチャイナというとお値段も高価ですが、③のものは②と比べて半額以下ですし、練習用のお皿として十分きれいに焼成も出来て私は気に入っています。
ボーンチャイナの焼成温度
釉がやわらかめのボーンチャイナは760~780℃くらいの低めの温度が良いと言われていますが、私の経験上800℃でも問題はないです。特に上であげた2種メーカーのボーンチャイナに関しては実験済み。
白磁の透光性ってなに?
ポーセリンとボーンチャイナを比較
① ポーセリン ② ボーンチャイナ
白磁器という種類は陶器に比べて全般的に【透光性】があります。光に透かして見たとき、明かりを通すということです。白磁器で出来たランプシェードもあります。暗がりでもライトの明かりを白磁器のシェード越しに明かりを通します。
しかし、一般のポーセリンとボーンチャイナを比較した場合は、よりいっそうボーンチャイナの方が透光性にたけています。絵付けでも転写紙を貼った場合でも仕上がりが滑らかで美しく感じます。
メーカー違いのボーンチャイナを比較
① ニトリのボーンチャイナ ② ノリタケのボーンチャイナ
安価と高価なボーンチャイナを【透光性】で見比べた時。ほぼ同等によく光りを通します。どちらもきれいです。
焼成で失敗した白磁
穴開き皿
時計や、二段、三段皿のように中央に穴の開いているプレートが売られています。素材は一般的なポーセリンです。
たいてい普通に焼けるのですが、一度、焼成中に割れたことがありました。焼成し始めてわりとすぐに、パリンという嫌な音が窯から・・焼成状態に不備はなく、その白磁そのものに問題があったと思われます。絵付けした後で割れるととても悲しいので、レース状に透かしの入った繊細な白磁や穴あき皿は、絵付け前に一度焼成して割れないか確かめてから絵付けする方が良いかもしれません。
ウェッジウッド
一般のお店で売られている白磁は焼成可能ですが、イギリス製のボーンチャイナ、ウェッジウッドのものだけは焼成で失敗したことがあるので避けたい白磁の種類です。
お生徒様持参のものでしたが、焼成したらこのプレートだけ表面がざらっざらになりました。よく見ないと分からない程度ですが、釉薬部分が焼き縮んだような感じです。他でもウェッジウッド製での焼成失敗の声をきいたことがあるので、避けた方が良いかと思う種類です。
白磁は何から出来ている?
白磁がないと始まらない絵付けやポーセラーツですが、白磁とはいったい何から出来ているのか⁉陶器と磁器を比較をしながら書いておきます。
白磁(はくじ)とは、白素地に無色の釉薬をかけた磁器の総称である。 ケイ酸とアルミニウムを主成分とする白色の粘土の素地に、鉄分のない植物灰と高陵石から精製された透明釉薬を掛け、高温の還元炎で焼き上げて作る磁器の一種。
Wikipediaより
磁器の4大成分
磁器は主に4つの成分が配合されてできています。
カオリン(陶石)
粘土の一種で、混じりけのない白色をしており磁器素地の主原料
珪石(安定性・耐火性)
融解温度が高いため、一般的な焼成に耐えて器の形状を保つガラス質成分
長石(溶融性)
焼成中に溶け、粘土と珪石とを結びつける働きがある
白色粘土(可塑性)
粘力があり、自由に形を作ることができる
白磁器と陶器の違い
両方を含めた「陶磁器」という呼び名もありますが、陶器と白磁では原材料・焼成温度など製造条件が異なります。
お店で見つけた白い器、絵付けやポーセラーツで使えるのは陶器✖ではなく白磁(磁器)〇と覚えておこう!
製造条件
素地の原材料 | 釉薬 | 焼成温度 | 焼き物例 | |
白磁 | 有色粘土 | あり | 1300~1400℃ | 有田焼・九谷焼・マイセン・セーブルなど |
陶器 | カオリン+珪石+長石+粘土 | あり | 1000~1300℃ | 備前焼・マジョリカ焼・デルフト焼など |
見分け方
素地の色 | 透光性 | 吸水性 | 叩いたときの音 | |
白磁 | 白色 | あり | なし | 澄んだ金属音 |
陶器 | 有色・白色 | なし | あり | にごった音 |
白磁の種類についてのまとめ
絵付けやポーセラーツでは陶器ではなく【白磁】を選ぶくこと。白磁にも色々種類があること。時には焼成での失敗もあるので、気になる白磁については先に焼成をして変化を見極めてた方が良い場合もあります。などなど…白磁についてまとめてみました。
ちなみに、イギリスでは磁器製造に必要なカオリンがなかったため、代わりに牛の骨を焼いてできた骨灰を配合して出来上がったものが【ボーンチャイナ】の発祥と言われています。
ドイツでは、アウグスト強王の命令で錬金術師ヨハン・フリードリッヒ・ベドガーを監禁させてまで白磁器の製法を解明させ、硬質磁器を生み出したのが、1710年からのマイセン磁器のはじまりです。
ヨーロッパで初めての硬質磁器が生み出されてから300年後の2010年にドイツの名窯マイセン設立300周年記念特別展へ訪れた時に行った、ベドガーが幽閉されていたというアルブレヒト城には、たくさんの素晴らしいマイセン磁器絵付けの作品を見ることができました。